薬剤師いんふぉ

薬剤師の学習記録です

2021-01-01から1年間の記事一覧

抗EGFR抗体薬の作用機序

EGFRとは 上皮増殖成長因子受容体(EGFR:Epidermal growth factor receptor)は上皮細胞などに発現が認められている膜貫通型の受容体です。 EGFRは細胞の増殖、分化、維持の調節に関与しています。 リガンド(増殖因子)がEGFR受容体に結合…

PARP阻害剤の作用機序

今回は「PARP阻害薬」についてです。 PARP阻害剤はPARP(ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)という損傷したDNAを修復する酵素を阻害することで 抗腫瘍効果を発揮する薬剤です。 (PARPは ”パープ”と読みます) PARPが…

CDK4/6阻害薬の作用機序

CDK4/6阻害薬(CDK:Cyclin Dependent Kinase)は「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」に使用される薬剤です。 CDK4/6とは CDK4/6とは「サイクリン依存性キナーゼ」のことであり、細胞分裂にストップがか…

LH-RHアゴニスト製剤について

LH-RHアゴニスト製剤は、閉経前乳がん、前立腺がんに使用されている薬剤です。 LH-RHとは視床下部から分泌される、「黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH:Luteinizing Hormone - Releasing Hoemone)」のことです。 (アゴニストは作動薬であ…

抗エストロゲン薬について

抗エストロゲン薬は乳がん細胞において、エストロゲンの作用を阻害することで乳がんを治療する薬剤です。 エストロゲンとは 女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。 エストロゲン(E)…

アロマターゼ阻害薬について

アロマターゼ阻害薬(AI:Aromatase Inhibitor)は、閉経後乳癌に使用される薬剤です。 エストロゲンとは 女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。 エストロゲン(E)は卵胞の発育と…

タイケルブ(ラパチニブ)の作用機序

タイケルブ(一般名:ラパチニブ)はEGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害薬です。 規格 タイケルブ錠250mg 適応症 HER2過剰発現が確認された手術不能又は再発乳癌 用法用量 ・カペシタビンと併用 1回1250mg ・アロマターゼ阻害薬と併用 …

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)はトラスツズマブとデルクステカンを結合させた抗体薬物複合体です。 規格 エンハーツ点滴静注用100mg 適応症 ・化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る) …

カドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)の作用機序

カドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)はトラスツズマブとエムタンシンを結合させた抗体薬物複合体です。 規格 カドサイラ点滴静注用100mg(注射用水5ml添付) 160mg(注射用水8ml添付) 適応症 ・HER2陽性の手術不能又は再発乳癌 …

ハーセプチン(トラスツズマブ)、パージェタ(ペルツズマブ)併用療法

ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)は抗HER2抗体薬であり、HER2過剰発現が確認された乳癌・胃がんに使用されます。 パージェタ(一般名:ペルツズマブ)は抗HER2抗体薬であり、HER2過剰発現が確認された乳癌に使用されます。 ハーセプ…

パージェタ(ペルツズマブ:PER)投与の注意点

パージェタ(一般名:ペルツズマブ)は抗HER2抗体薬であり、HER2過剰発現が確認された乳癌に使用されます。 規格 パージェタ点滴静注420mg/14mL 適応症 HER2陽性の乳癌 用法用量 トラスツズマブと他の抗悪性腫瘍薬との併用において、 …

ハーセプチン(トラスツズマブ:HER)投与の注意点

ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)は抗HER2抗体薬であり、HER2過剰発現が確認された乳癌・胃がんに使用されます。 規格 ハーセプチン注射用60(溶解液:日局注射用水3.0ml) ハーセプチン注射用150(溶解液:日局注射用水7.2ml)…

アルドステロンについて

アルドステロンは副腎皮質の球状層から分泌される鉱質コルチコイドの一種です。 アルドステロンは腎臓の集合管や遠位尿細管に作用して、ナトリウムの再吸収を促進します。 そしてナトリウムの再吸収は水の再吸収につながり、循環血漿量が増加します。 (水と…

ウテメリン注(リトドリン)のブドウ糖希釈について

ウテメリン(一般名:リトドリン)は子宮収縮抑制作用があり、切迫流・早産治療に使用される薬剤です。 ウテメリン(一般名:リトドリン)は子宮平滑筋を弛緩させることで、子宮収縮抑制作用を発揮します。 yakuzaishi-info.hateblo.jp ウテメリンには内服薬…

ウテメリン(リトドリン)の作用機序

ウテメリン(一般名:リトドリン)は子宮収縮抑制作用があり、切迫流・早産治療に使用される薬剤です。 切迫早産とは 早産とは正期産よりも前の出産のことです。 正期産は37週~42週未満での出産のことをいいます。 妊娠22週~36週での出産が早産で…

リウマトレックス(メトトレキサート)飲み忘れた場合

リウマトレックス(メトトレキサート:MTX)は抗リウマチ薬です。 リウマチの他、乾癬の治療で使用されることもあります。 リウマトレックスはジヒドロ葉酸還元酵素(ジヒドロ葉酸レダクターゼ:DHFR)を阻害することで、葉酸の合成を阻害して炎症細…

ムコスタ点眼液の使い方と注意点

ムコスタ点眼液UD2%(有効成分:レバミピド)はドライアイ治療に使用される薬剤です。 ムコスタ点眼液はムチンの分泌量を増やすことで涙液を安定化し、ドライアイ症状を改善していきます。 yakuzaishi-info.hateblo.jp ムコスタ点眼液は防腐剤を含んでい…

ムコスタ点眼液の作用機序

ムコスタ点眼液UD2%(有効成分:レバミピド)はドライアイ治療に使用される薬剤です。 防腐剤を含んでいない、1回使い切りタイプのユニット・ドーズ製剤です。 UDは Unit Dose の略です。 有効成分である「レバミピド」は、胃炎治療薬のムコスタ錠(…

ロゼレム(ラメルテオン)の作用機序と服用タイミング

ロゼレム(一般名:ラメルテオン)はメラトニン受容体作動薬であり、入眠困難に使用される薬剤です。 規格 錠剤:8mg 適応症 不眠症における入眠困難の改善 用法用量 1回8mg 就寝前投与 作用機序 メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンであり…

シクレスト(アセナピン)による口の痺れについて

シクレスト(一般名:アセナピン)は、多元受容体作用抗神経薬(MARTA)に分類される統合失調症治療薬です。 yakuzaishi-info.hateblo.jp 作用機序や舌下投与の理由についてはこちらにまとめています。 yakuzaishi-info.hateblo.jp 他のMARTAと比…

セファランチンについて

セファランチン(有効成分:タマサキツヅラフジ抽出アルカロイド)はツヅラフジ科植物タマサキツヅラフジの根から抽出されたアルカロイドです。 アルカロイドは窒素原子を含み、塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称です。 セファランチンは様々な薬理作…

アルロイドG(アルギン酸ナトリウム)の注意点

アルロイドG(一般名:アルギン酸ナトリウム)は消化性潰瘍用剤です。 胃の粘膜を保護したり、胃の出血を止める作用があります。 適応症 下記疾患における止血及び自覚症状の改善 胃・十二指腸潰瘍、びらん性胃炎 逆流性食道炎における自覚症状の改善 胃生…

ヘモグロビンA1cとグリコアルブミン

ヘモグロビンA1c(HbA1c)とグリコアルブミン(GA)はどちらも血糖コントロールの指標となります。 HbA1c 基準値:4.3~5.8% HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映します。 HbA1cは、赤血球に含…

NAFLDとNASHについて

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪(トリグリセリド)が溜まった状態のことです。 脂肪肝の初期では症状はほとんどありませんが、肝機能は少しずつ低下していき、やがて肝炎を起こし、肝硬変になってしまうこともあります。 脂肪肝は、「アルコール性脂肪肝」と「…

アンヒバ坐剤とナウゼリン坐剤 使用の順番

坐薬は肛門から投与し作用させる薬剤です。 痔の治療で用いられる局所に作用するものと、解熱や鎮痛などの全身に作用するものがあります。 内服薬に比べて、 ・肝臓で分解を受けずに、すぐに血中に吸収されるので、効果の発現が速い ・胃粘膜への刺激がなく…

活性型ビタミンD3製剤の違い

ビタミンDは骨や歯の正常な発育に必要なビタミンです。 ビタミンDの吸収や代謝に問題があると、カルシウムの吸収が低下し骨粗鬆症の原因となってしまいます。 ビタミンD3は肝臓と腎臓でそれぞれ代謝を受けることで活性型ビタミンD3へと変換されます。 …

リウマトレックス(メトトレキサート)と葉酸

リウマトレックス(一般名:メトトレキサート MTX)は抗リウマチ薬です。 リウマチの他、乾癬の治療で使用されることもあります。 ガイドラインでも推奨されており、リウマチ治療のアンカードラッグ(中心的薬剤)として使用されています。 リウマトレッ…

SU薬の比較と特徴

経口血糖降下薬の一種であるSU薬(スルホニル尿素薬)は、インスリン分泌を促し血糖値を下げるお薬です。 SU薬の作用機序は以下のようになります。 SU薬が膵β細胞のSU受容体に結合 ↓ ATP感受性Kチャネルを閉鎖 ↓ 細胞膜の脱分極 ↓ 電位依存性C…

食後血糖値と空腹時血糖値

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。 食事には炭水化物(糖質)が含まれており、体内でブドウ糖となりエネルギーとして使用されます。 血糖値は食事の影響を受けるので、食事の前後で変動します。 血糖値の単位はmg/d…

SU薬の二次無効について

経口血糖降下薬の一種であるSU薬(スルホニル尿素薬)は、インスリン分泌を促し血糖値を下げるお薬です。 SU薬の作用機序は以下のようになります。 SU薬が膵β細胞のSU受容体に結合 ↓ ATP感受性Kチャネルを閉鎖 ↓ 細胞膜の脱分極 ↓ 電位依存性C…