オキサリプラチン(L-OHP)は白金製剤に分類される抗悪性腫瘍薬です。
白金製剤は、構造中に白金(Pt)を含んでおり、DNA鎖間に架橋を形成しDNA合成を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。
がん細胞に対する作用の仕方はシスプラチンと同じですが、異なる化学構造をもち、適応も異なります。
また副作用では、末梢神経障害が高頻度で生じるとされています。
この末梢神経障害はオキサリプラチンの用量規制因子になっています。
末梢神経障害では、手足の痺れや痛み、感覚異常、感覚不全の他に、口周りの痺れや喉が締め付けらるような感覚などが症状としてあげられます。
オキサリプラチンによる末梢神経障害には、投与直後から数日以内に起こる急性末梢神経障害と、治療の継続で累積投与量が増えることで起こる持続性末梢神経障害の2タイプがあります。
・急性末梢神経障害
急性末梢神経障害は投与直後から数日以内に発現します。
一過性のものであり数日で回復するため、大きな問題とは考えられていません。
寒冷刺激により引き起こされるため、冷たい飲食物を口にしたり、冷たいものに触れるのを避ける必要があります。
手足や口周りの異常感覚や喉が締め付けられる感覚が生じます。
発現機序
オキサリプラチンが細胞膜でオキサレート基と白金を含む部分に分かれます。
オキサレート基がカルシウムとキレートを形成し、NaチャネルからのNa+が細胞内へ流入するのを阻害することで感覚異常が生じていると考えられています。
・持続性末梢神経障害
用量依存的に発現し、総投与量が800mg/㎡を超えると出現しやすくなります。
手足のしびれや感覚の低下、不快感や痛み等が徐々に生じ、進行すると箸を使いにくい、ボタンを掛けにくい、歩きにくいといった日常生活において障害が現われてきます。
急性期とは異なり寒冷刺激とは関係なく症状があらわれます。
投与中止により改善が見られる場合がありますが、数ヶ月~数年に渡って症状が続く場合もあります。
進行すると回復が見込めなくなってしまうこともあるため、早期発見、休薬・減量が重要です。
発現機序
投与を継続していると、神経節細胞にオキサリプラチンが蓄積し神経細胞体が障害を受けてしまい、神経細胞体が破壊されると軸索や髄鞘も再生されないため、投与中止後も障害が残りやすいです。