シスプラチン(CDDP)は白金製剤に分類される抗悪性腫瘍薬です。
白金製剤は、構造中に白金(Pt)を含んでおり、DNA合成を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。
シスプラチンは多くのがんに有効性が認められており、広く使用されている抗悪性腫瘍薬ですが、副作用の1つに腎障害があります。
腎障害はシスプラチンの用量制限毒性になっており、近位尿細管障害によって引き起こされます。
腎障害が起こる原因
シスプラチンは胆汁中への分泌などが少なく、尿中から排泄される腎排泄型の薬剤です。
腎障害はシスプラチンが近位尿細管細胞を障害することで生じてしまいます。
腎障害予防のハイドレーション
シスプラチンによる腎障害を予防するため、投与前後は輸液によるハイドレーションを行います。
大量の輸液を投与することで、シスプラチン濃度を下げ近位尿細管が障害されるのを防ぎます。
腎障害予防のためのハイドレーションについてはこちらにまとめています。
マグネシウムによる腎保護効果
腎障害予防のために、上記のハイドレーションとともにマグネシウムの補充も推奨されています。
シスプラチンを投与することで、腎臓からのマグネシウム排泄が亢進します。
また、消化器毒性により嘔吐や下痢が生じた際にもマグネシウムは喪失してしまいます。
低マグネシウム血症の状態だと近位尿細管でのシスプラチンの再吸収が亢進され、近位尿細管のシスプラチン濃度が高まることで腎障害を起こす危険性が高まります。
これを防ぐために、マグネシウムの補充が推奨されています。
シスプラチン投与前に 硫酸Mg 8mEq
または
シスプラチン投与前後に 硫酸Mg 4mEq ずつ
が投与されることが多いです。
ハイドレーションに加えてマグネシウムを補充することで、血清クレアチニン値やクレアチニンクリアランスの悪化を防ぐことができたというデータもあります。
マグネシウムを投与することで、低マグネシウム血症予防効果が期待でき、腎機能への好影響も示唆されていることから、シスプラチン投与時の腎障害予防のためにマグネシウム投与は推奨されています。