イリノテカン(CPT-11)はトポイソメラーゼⅠ阻害薬に分類される薬剤です。
トポイソメラーゼ阻害薬はがん細胞のトポイソメラーゼがDNA鎖のねじれを解消して再結合しようとするのを阻害することで、DNAの複製を阻害します。
トポイソメラーゼにはⅠとⅡがあり、イリノテカンはトポイソメラーゼⅠを阻害します。
イリノテカンは肝臓でカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物のSN-38へと変換されます。
(一部はCYP3A4によりAPCやNPCへと代謝されますが、NPCはカルボキシルエステラーゼにより活性代謝物のSN-38へと変換されます。)
このSN-38は肝臓でUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)によりグルクロン酸抱合を受け、グルクロン酸抱合体のSN-38Gへと変換され不活化します。
SN-38Gは胆汁中に排泄され、腸管へと移行します。
このSN-38を不活化(解毒化)するUGT1A1には遺伝子多型が存在します。
遺伝子多型
タンパク質合成の設計図となるのが遺伝子です。
遺伝子情報の一部が個人間で異なる場合がありますが、頻度が多い(100人に1人以上)場合を遺伝子多型、こくまれにしかない場合を遺伝子変異と呼びます。
UGT1A1の遺伝子多型でUGT1A1*6とUGT1A1*28の2種類がSN-38の代謝に影響しています。
UGT1A1*6はエクソン1に存在する遺伝子多型で塩基配列が異なっています。
UGT1A1*28はプロモーター領域の変異です。
この2種類の遺伝子多型はUGT1A1の活性低下によりSN-38がグルクロン酸抱合を受けにくくなり、抗腫瘍効果や骨髄抑制が増強してしまいます。
UGT1A1*6、UGT1A1*28のいずれかをホモ接合体(*6/*6)(*28/*28)として又はいずれもヘテロ接合体(*6/*28)としてもつ患者はUGT1A1のグルクロン酸抱合が低下しSN-38の代謝が遅延し副作用が発現するリスクが高まります。
これら3つのハイリスク群の頻度は10%程度であり、Grade3以上の好中球減少が高頻度(約80%)に発現しています。
このように遺伝子多型はイリノテカンの副作用発現に関与しているため、投与前に遺伝子多型解析が行われています。
イリノテカンの代表的な副作用である下痢についてはこちらです。