H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)はプロトンポンプ阻害薬(PPI)に次いで強力な胃酸分泌抑制作用をもちます。
胃粘膜壁細胞の基底膜側に存在するヒスタミンH2受容体において、ヒスタミンと拮抗して働きプロトンポンプへの刺激が抑制されて、胃酸分泌を抑制します。
作用が強力なPPIが登場してからも消化性潰瘍の治療に広く使用され続けている薬剤です。
PPIと違い、投与期間の制限がないのも影響していると思います。
H2受容体拮抗薬には以下の薬剤があります。
・ラニチジン(ザンタック)
・シメチジン(タガメット)
・ロキサチジン(アルタット)
・ラフチジン(ザンタック)
ほとんどが腎排泄型の薬剤であるため、腎障害のある患者や高齢者への投与に注意が必要です。
しかし上記の6薬剤のうちラフチジン(ザンタック)のみが肝代謝型の薬剤です。
ラフチジン以外の5薬剤は未変化体尿中排泄率が約60~90%の腎排泄型の薬剤で、多くの未変化体が腎臓を通って排泄されます。
ラフチジンはCYP3A4、2D6により代謝され、未変化体尿中排泄率は約10%程度の肝代謝型の薬剤であり、腎障害のある患者や、腎機能の低下した高齢者にも使いやすい薬剤です。
またCYPによる代謝を受けますが、添付文書には併用注意の記載はありません。
(シメチジンは腎排泄型の薬剤ですが、CYP3A4、2Dを阻害するためワルファリンやトリアゾラム、テオフィリン等と併用注意となっています)
ラフチジンには酸抑制作用以外にも作用があります。
胃粘膜の恒常性維持機構にはカプサイシン感受性知覚神経が関与しています。
ラフチジンはカプサイシン感受性知覚神経を介して胃粘膜血流増加作用や胃粘液増加作用を示し、防御因子増強作用が認められている薬剤です。
以前に述べたニザチジン(アシノン)にも酸抑制作用以外の作用がありましたね。
ラフチジン以外の薬剤では腎機能が低下した患者には用量や投与間隔に注意が必要ですが、ラフチジンではこうした心配がありません。
(ただし透析患者にラフチジンを使用する場合は低用量から慎重に投与するようにとされています)
先発品のプロテカジンにはOD錠もあり、唾液のみで服用することができる剤型もあります。
このように肝代謝型のH2受容体拮抗薬はラフチジンのみであり、腎機能障害のある患者に安全に使用するのに適した薬剤です。
まとめ
・H2受容体拮抗薬のうち、ラフチジンのみが肝代謝型の薬剤である
・ラフチジン以外のH2受容体拮抗薬は腎排泄型の薬剤である
・ラフチジンは腎機能が低下した患者にも使いやすいH2受容体拮抗薬である