薬剤師いんふぉ

薬剤師の学習記録です

ピオグリタゾン(アクトス)の特徴的な副作用(浮腫、心電図異常、骨折)

ピオグリタゾン(アクトス)はインスリン抵抗性改善薬として糖尿病治療に使用されている薬剤です。

 

このピオグリタゾンには特徴的な副作用がいくつかあるのですが、まずは作用機序の確認です。

 

 ピオグリタゾンは脂肪細胞に存在するPPAR-γ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)を刺激します。

 

これにより小型脂肪細胞への分化が促されます。

 

肥大化した脂肪細胞ではインスリン抵抗性を引き起こすTNF-α(腫瘍壊死因子α)の分泌が亢進していて、インスリン抵抗性を改善するアディポネクチンの分泌は低下しています。

 

肥満がインスリン抵抗性を引き起こしてしまうのはこのためです。

 

小型脂肪細胞のTNF-αやアディポネクチンの分泌は正常であるため、ピオグリタゾンがこの小型脂肪細胞を増やすことでインスリン抵抗性を改善しています。

 

 このような機序によりピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善させるので、糖尿病治療に用いられています。

 

ではここからは本題のピオグリタゾンにみられる特徴的な副作用をいくつか見ていきましょう。

 

まず代表的な副作用として浮腫(むくみ)があります。

 

ピオグリタゾンが近位尿細管に作用し、ナトリウムの再吸収が亢進されるため循環血液量が増えて浮腫が生じると考えられています。

 

ナトリウムと水は一緒に動くので、ナトリウム量が増えたことにより浮腫が生じてしまいます。

 

この副作用には性差があり、女性に生じやすいため、「女性に投与する場合は、浮腫に注意しながら1日1回15mgから投与を開始することが望ましい」とされています。

 

その他に、インスリン併用患者高齢者にも注意するように記載がされています。

 

循環血液量の増加による浮腫が短期間に生じると、心不全を発症したり悪化することがあるので浮腫や体重増加がないか注意が必要です。

 

ナトリウムの再吸収亢進以外に、分化した小型脂肪細胞が過食や運動不足によるエネルギー過剰状態により再び肥大化してしまい、体重増加を引き起こすこともあります。

 

またピオグリタゾン服用中に心電図異常や心胸比増大も報告されており、定期的な心電図検査も行わなければなりません。

 

心不全の発症や増悪に注意しなくてはならない薬剤であるため、心不全の患者や既往歴のある患者には投与禁忌です。

 

海外ではピオグリタゾン服用中の女性において骨折発現頻度の上昇が認められています。

そのため骨密度検査も定期的に行う必要があります。

 

また以前、ピオグリタゾンには膀胱癌発症のリスクがあると指摘されていて、現在では因果関係は認められなかったものの可能性が完全に否定はできていないので、膀胱癌の患者には使用しないこと、リスクについて患者に説明することとされています。

 

これらの副作用を見逃さないためにも、心電図検査、骨密度検査、尿検査等を行い、患者への聞き取りも続けていかなくてはいけません。

 

 

  まとめ

・ナトリウムの再吸収が促進され浮腫が生じることがあり、女性に生じやすい

・心電図異常や心胸比増大が報告されており、定期的な心電図検査を行わなくてはいけない

・海外では女性において、骨折発現頻度の上昇が認められている