以前に、制吐剤として使用されるD2受容体拮抗薬の作用機序についてまとめました。
中枢性と末梢性の2つの作用から制吐作用を発揮する薬剤でした。
ドンペリドン(ナウゼリン)とメトクロプラミド(プリンペラン)が該当しますが、今回はその2剤の違いや特徴について詳しくみていきたいと思います。
まず適応症ですが
下記疾患及び薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、あい気)
慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群、抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時
メトクロプラミド
次の場合における消化器機能異常(悪心・嘔吐・食欲不振・腹部膨満感)
胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢・胆道疾患、腎炎、尿毒症、乳幼児嘔吐、薬剤(制癌剤・抗生物質・抗結核剤・麻酔剤)投与時、胃内・気管内挿管時、放射線照射時、開腹術後
X線検査時のバリウムの通過促進
続いて用法は
1日3回 食前
メトクロプラミド
1日2~3回 食前
となっています。
適応症はメトクロプラミドの方が多い感じですが、ドンペリドンにはレボドパ製剤投与時の消化器症状にも適応があります。
ドンペリドンもメトクロプラミドも制吐作用は同程度と言われています。
ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくく、脳へと移行しにくいです。
脳内でD2受容体拮抗薬が作用し、ドパミンの作用が低下すると錐体外路症状が生じてしまうおそれがあります。
ドンペリドンはこうした心配の少ない薬剤になります。
メトクロプラミドは血液脳関門を通過しやすい性質があり、錐体外路症状の発現に注意が必要です。
「小児では錐体外路症状が発現しやすいため、過量投与にならないよう注意すること」と添付文書にも小児への投与に対して注意が記載されています。
中枢性嘔吐に関与するCTZ(化学受容器引金帯)ですが、第四脳室に存在しており、こちらには血液脳関門がありません。
ですので、ドンペリドンもCTZに作用し中枢性の嘔吐を抑制することができます。
メトクロプラミドには5-HT3受容体拮抗作用(制吐作用)や5-HT4受容体拮抗作用(消化管運動促進作用)といった、抗ドパミン作用の他、吐き気などに関与するセロトニンへの作用ももつと言われています。
ドンペリドンでは動物実験(ラット)で催奇形作用が報告されており、妊婦には投与禁忌の薬剤となっています。
メトクロプラミドは妊婦に対しては有益性投与の薬剤と記載されています。
また授乳婦に対しては、メトクロプラミドは母乳中への移行が報告されているため、やむを得ず投与した場合は授乳を避けるように記載されています。
ドンペリドンでは、動物実験(ラット)で乳汁中への移行が報告されており、投与する場合は大量投与を避けること、と記載に違いがあります。
一般的に、妊娠中はメトクロプラミド、授乳中はドンペリドンを選ぶことが多いようです。
また、D2受容体拮抗薬にはもう一つ、イトプリド(ガナトン)というお薬もあります。
その特徴はこちらでまとめています。
まとめ
・ドンペリドンは血液脳関門を通過しにくく錐体外路症状が生じにくい
・メトクロプラミドは抗ドパミン作用以外にセロトニンへの作用ももつ
・妊娠中はメトクロプラミド、授乳中はドンペリドンを使用することが多い