硝酸薬のところで、前負荷、後負荷について少しだけ触れました。
今回おさらいで、もう少し詳しくまとめておきたいと思います。
心筋が収縮をするときの負荷は、前負荷と後負荷に分けられます。
前負荷は心臓が収縮する直前(拡張終期)に心室にかかる容量負荷です。
前負荷を決定する要因の一つに、静脈還流量(静脈から心臓へ戻ってくる血液の量)があります。
静脈からたくさんの血液が心臓へ入ってくると、心臓はその血液を送り出すために、心筋を大きく拡張し、強く収縮して血液を送り出さなくてはいけません。
このように前負荷は静脈還流量が多い程、拡張終期の心室容積が大きくなり前負荷は大きなものとなります。
循環血液量の増加や静脈圧の上昇は前負荷の増大につながります。
塩分の過剰摂取は循環血液量の増加につながりますので、注意しなくてはいけませんね。
硝酸薬の作用機序でも述べましたが、静脈を拡張することで静脈中に保持できる血液の量が増えるため、心臓へ戻ってくる血液量が減り前負荷の軽減につながります。
また、利尿剤等で循環血液量を減らしても前負荷を軽減することができます。
後負荷は心筋が収縮を開始した直後に、心室かかる圧負荷です。
後負荷は末梢血管抵抗の影響を受けます。
心臓は動脈血圧にうち勝って血液を送り出していますが、血管抵抗が高いと血液を送り出すのに強い力が必要となります。
動脈硬化などで血管の抵抗が高まると、後負荷も増えてしまいます。
前負荷の時と同様に、動脈を拡張することで血管抵抗が下がり、心臓が少ない力で血液を送り出せるようになり、後負荷の軽減へとつながります。
前負荷や後負荷が高い状態が続くと、心臓に負担がかかりつづけ、心臓の肥大(心肥大) を引き起こすおそれがあります。
肥大した心臓は機能が低下しており、全身へ血液を送り出す能力も十分ではなくなってしまいます。
進行すると心不全へつながるおそれもあります。
まとめ
・前負荷は心臓が収縮する直前(拡張終期)に心室にかかる容量負荷
・循環血液量を減らしたり、静脈拡張により前負荷を軽減できる
・後負荷は心筋が収縮を開始した直後に、心室かかる圧負荷
・末梢血管抵抗を下げることで後負荷を軽減できる