ピトレシン(一般名:バソプレシン)は脳下垂体後葉ホルモン剤です。
バソプレシンは抗利尿ホルモンとも呼ばれます。
ピトレシンの剤型は注射剤(20単位/1ml/1A)です。
適応症
下垂体性尿崩症、下垂体性又は腎性尿崩症の鑑別診断、腸内ガスの除去 (鼓腸、胆のう撮影の前処置、腎盂撮影の前処置)、食道静脈瘤出血の緊急処置
用法用量
下垂体性尿崩症
1回2~10単位 1日2~3回皮下注又は筋注
下垂体性又は腎性尿崩症の鑑別診断
5~10単位を皮下注又は筋注 もしくは0.1単位を静注
腸内ガスの除去 (鼓腸、胆のう撮影の前処置、腎盂撮影の前処置)
5~10単位を皮下注又は筋注
食道静脈瘤出血の緊急処置
20単位を5%ブドウ糖液など100~200mlに混和し、0.1~0.4単位/分で持続的に静注
作用機序
ピトレシンの有効成分であるバソプレシンは視床下部にて合成され下垂体後葉から分泌されるホルモンです。
抗利尿ホルモン(ADH:Antidiuretic hormone)、血圧上昇ホルモンとも呼ばれます。
バソプレシンは腎集合管のV2(バソプレシン)受容体に作用し、血管内への水の再吸収を促進します。(抗利尿作用)
また、血管平滑筋のV1a受容体に作用し、末梢血管を収縮させて血圧を上昇させます。
(血圧上昇作用)
腹部内臓の細動脈を収縮させて門脈血流が減少し、一時的に門脈圧を下げることができます。
門脈圧亢進による食道出血時に止血作用を発揮します。(止血作用)
大腸平滑筋のV1a受容体に作用することで、腸管蠕動運動を亢進させる働きもあります。(腸管蠕動運動促進)
敗血症性ショックではノルアドレナリンの投与で効果不十分な場合(ノルアドレナリン抵抗性)に血管収縮作用による血圧維持を期待して使用が考慮されます。
(急性低血圧、ショック時の補助療法)
中枢性尿崩症について
中枢性尿崩症ではバソプレシン(抗利尿ホルモン)の欠乏により、とても薄い尿が大量に作られてしまう疾患です。
バソプレシンの不足により腎集合管で水を再吸収することができず、そのまま排泄してしまいます。
口渇、多飲、多尿の症状がみられます。
治療にはバソプレシンやデスモプレシンといった抗利尿ホルモン製剤が使用されます。
また、バソプレシンの分泌が十分にあっても、腎臓が反応しなくなってしまう腎性尿崩症もあります。
反対に、バソプレシンの分泌が過剰になってしまうSIADH(バソプレシン分泌不適合症候群)についてはこちらです。