オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬なども登場しましたが、現在も使用される頻度の高いベンゾジアゼピン(BZ)系睡眠薬の作用機序についてです。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はほとんどがベンゼン環とジアゼピン環から成るベンゾジアゼピン骨格を有しています。
レム睡眠に影響しにくく自然に近い睡眠をもたらし、即効性があり、バルビツール酸系よりも安全性に優れています。
作用時間の異なる様々な種類の薬剤があり古くから使用されてきました。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はGABA神経系の作用を増強することで催眠作用を発揮します。
GABA(Gamma Amino Butyric Acid :γ-アミノ酪酸)は脳をリラックスさせる神経伝達物質の一種です。
GABAがGABA受容体に結合すると、イオンチャンネルが開きCl-(塩化物イオン)が細胞内に流入します。
陰イオンの流入で細胞内は負に傾き、神経の興奮は抑制されます。
反対に興奮系の伝達物質であるグルタミン酸がグルタミン酸受容体に結合すると、イオンチャンネルが開きNa+(ナトリウムイオン)が細胞内に流入します。
この場合は、陽イオンが細胞内に流入するので、細胞内は正に傾き神経の興奮が増強されます。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はGABA受容体の、GABA結合部位とは別の部位であるベンゾジアゼピン結合部位に結合します。
これによりGABAが結合したのと同じように、Cl-(塩化物イオン)が細胞内に流入し神経活動が抑制され眠りやすくなります。
またGABA受容体にはω1とω2の二つのサブタイプがあります。
(ω3は中枢ではなく末梢に存在しています)
ω1:催眠、鎮静作用
ω2:抗けいれん、抗不安、筋弛緩作用
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はω1、ω2の両方に作用するため、筋弛緩作用による転倒リスクの上昇に注意しなくてはいけません。
ベンゾジアゼピン骨格を有さない、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はω1への選択性が高く、ベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも転倒のリスクが少ないと言われています。
持ち越し効果、耐性や依存にも注意しなくてはいけません。
レム睡眠に影響しにくいと記載もしましたが、それでも睡眠の質が低下してしまうとも言われています。