スボレキサント(ベルソムラ)は不眠症治療に使用される、オレキシン受容体拮抗薬です。
従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは異なる機序の睡眠薬です。
今回はスボレキサントの作用機序について見ていきたいと思います。
オレキシンは視床下部で産生される神経伝達物質であり、脳を覚醒させる働きがあります。
スボレキサントはオレキシンがオレキシン受容体に結合するのを阻害して、覚醒の維持をしようとする働きを妨げます。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はGABA受容体を介して睡眠、鎮静作用を示していましたが、スボレキサントは覚醒のシステムに作用して睡眠をもたらす薬剤です。
このようにスボレキサントは覚醒を抑制することで、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行します。
従来の眠剤よりも、本来の眠りに近い状態になると言われています。
過剰な覚醒を抑えて、自然な眠りへと導きます。
スボレキサントは寝付きを良くして、睡眠を維持してくれる薬剤です。
入眠障害は寝付きが悪い状態、中途覚醒は途中で目が覚めてしまう不眠です。
スボレキサント1剤で二つの不眠のタイプに対応できるのは大きなメリットですね。
また、このような作用機序の違いから、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬等よりも眠気が生じにくく、反跳性不眠も生じにくいとされています。
反跳性不眠は、急な服用中止により不眠症状の悪化が生じてしまうものです。
他のベンゾジアゼピン系睡眠薬などの睡眠薬を使用していた場合、急にベルソムラへ切り替えると反跳性不眠が生じてしまうおそれがあります。
今まで使用していた睡眠薬を急に中止せず、ベルソムラと一緒にしばらく服用しながら徐々に減量をしていくことで反跳性不眠を防ぐことができます。
その際は数週間単位で、少しずつ減らしていくようにします。
医師と相談しながら行うようにしましょう。
スボレキサントは向精神薬に指定されておらず、投与日数の制限がない薬剤です。
他の定期薬が30日分以上あっても同じ日数処方することが可能です。
その他のスボレキサントの注意点については、こちらです。
まとめ
・スボレキサント(ベルソムラ)はオレキシン受容体拮抗薬である
・覚醒を抑制して自然な眠りをもたらす
・反跳性不眠が生じにくいが、他の眠剤から切り替える場合は前の薬剤と併用しながら徐々に減量をしていく