抗HER2抗体薬はヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)に対するヒト化抗体製剤です。
HER2について
ヒト上皮成長因子受容体(HER:human epidermal growth factor receptor)には、HER1(EGFR)、HER2、HER3、HER4の4種類があります。
HER2はそのうちの1つです。
HER2などは細胞膜表面に存在しています。
増殖因子が結合した他のHERと二量体(ダイマー)を形成すると、細胞内へシグナル伝達が起こり、細胞増殖が起こります。
HER2が過剰に発現していると、増殖因子がなくてもHER2同士または、他のHERと二量体を形成して、次々と細胞内へ増殖のシグナル伝達が送られてしまいます。
がん細胞の中にはHER2をたくさん持つものがあり、この過剰に発現しているHER2により、がん細胞の増殖が次々と行われていきます。
抗HER2抗体薬の作用機序
抗HER2抗体薬はこの細胞膜表面にあるHER2受容体に結合します。
すると、HER2が二量体を形成できなくなり、細胞内へのシグナル伝達が抑えられ、細胞増殖を抑制することができます。
また、抗HER2抗体薬がHER2受容体に結合すると、NK細胞が効率よくがん細胞を攻撃するようになります。
この作用を抗体依存性細胞障害活性(ADCC活性)と言います。
乳がんや胃がんであっても、HER2が多く発現していなければ、抗HER2抗体薬を使用しても効果が低くなってしまいます。
HER2タンパクの量を調べる検査を行い、HER2タンパクの量を確認してから抗HER2抗体薬を使用するかどうかを決めます。
抗HER2抗体薬による心毒性
HER2はがん細胞だけでなく心筋細胞にも存在しています。
そのため、抗HER2抗体薬を投与した際、心不全等の心毒性が問題となる場合があります。
投与開始前から心機能の確認を行い、投与中も心機能の定期的な検査を行います。
抗HER2抗体薬による心障害は、休薬することで改善すると言われており、心機能の改善後は再び抗HER2抗体薬を使用するか検討することができます。
抗HER2抗体薬の種類
・トラスツズマブ(ハーセプチン)
・トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ)
・ペルツズマブ(パージェタ)