レボホリナート(l-LV)は活性型葉酸製剤であり、フルオロウラシル(5-FU)の作用増強に使用される薬剤です。
適応症
・ レボホリナート・フルオロウラシル療法
胃癌(手術不能又は再発)及び結腸・直腸癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
・レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
結腸・直腸癌、小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
作用機序
レボホリナートはフルオロウラシルの作用増強で使用されています。
フルオロウラシルはピリミジン合成経路で代謝を受けてFdUMPとなります。
このFdUMPがチミジル酸合成酵素(TS)にdTUPの代わりに結合することで、dTUPが反応できずdTMPがつくられなくなるためDNA合成が阻害され、抗腫瘍効果を発揮します。
レボホリナートは細胞内で還元され、5,10メチレンテトラヒドロ葉酸(5,10-CH2-THF)となります。
この還元型葉酸である5,10-CH2-THFが加わると、フルオロウラシルの活性代謝物であるFdUMPとチミジル酸合成酵素(TS)の3者がより強固な複合体を形成します。
このため、FdUMPとTSの結合が離れにくくなり、フルオロウラシルの抗腫瘍効果が増強されます。
にせものの部品をTSに組み込むのですが、レボホリナートがそれを離れにくくするイメージですね。
注意点
レボホリナート・フルオロウラシル療法及び持続静注併用療法はフルオロウラシルの細胞毒性を増強する療法であり、死亡例も報告されており十分注意して行わなければなりません。
重篤な骨髄抑制、下痢症状、重篤な感染症、多量の腹水や胸水、重篤な心疾患又はその既往歴がある、全身状態が悪化している、こういった患者には投与することができません。
テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(S-1)投与中の患者及び投与中止後7日以内の患者にも使用することができません。
併用により、フルオロウラシルの血中濃度が上昇してしまうおそれがあるからです。
代表的なレジメン
mFOLFOX6療法:切除不能進行・再発結腸・直腸がん
レボホリナート+フルオロウラシル+オキサリプラチン
FOLFIRINOX療法:切除不能膵がん
レボホリナート+フルオロウラシル+イリノテカン+オキサリプラチン
FOLFIRI療法:切除不能進行・再発結腸・直腸がん
レボホリナート+フルオロウラシル+イリノテカン
ホリナート(ロイコボリン/ユーゼル)から活性をもつl体だけを製剤化したものがレボホリナートです。