薬剤師いんふぉ

薬剤師の学習記録です

ティーエスワン(S-1)の注意点

ティーエスワン(S-1:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)はピリミジン代謝拮抗薬に分類される抗悪性腫瘍薬です。

 

作用機序などについてはこちらです。

yakuzaishi-info.hateblo.jp

 

 

 

服用は食後

空腹時に投与した場合、フルオロウラシルの活性化を抑制するオテラシルカリウムの吸収が増加し、ティーエスワンの抗腫瘍効果が減弱することが予想されることから食後投与となっています。

 

 

腎障害のある患者への投与量

腎機能が低下している患者では、フルオロウラシルの分解酵素を阻害するギメラシルの腎排泄が低下し、血中フルオロウラシル濃度が上昇し、骨髄抑制等の副作用が強くあらわれるおそれがあるため慎重投与となっています。

重篤な腎障害がある患者では投与禁忌です)

クレアチニンリアランス値(Ccr)で減量基準があります。

また、開始用量はクレアチニンリアランス値だけで判断はできません。

 

  単独投与

Ccr>80  初回基準量

80>Ccr≧60  初回基準量(必要に応じて1段階減量)

60>Ccr≧30  原則として1段階以上の減量

          (30~40未満は2段階減量が望ましい)

30>Ccr  投与不可

 

 

併用禁忌薬

フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍薬

・フルオロウラシル(5-FU)

テガフール・ウラシル配合剤(ユーエフティ)

・テガフール(フトラフール)

・ドキシフルリジン(フルツロン)

・カペシタビン(ゼローダ)

これらの薬剤との併用療法

・ホリナート・テガフール・ウラシル療法(ユーゼル・ユーエフティ)

・レボホリナート・フルオロウラシル療法(アイソボリン・5-FU)

フッ化ピリミジン系抗真菌剤

・フルシトシン(アンコチル)

 

これらの薬剤と併用すると、著しくフルオロウラシルの血中濃度が上昇し、早期に重篤な血液障害や下痢、口内炎等の消化管障害等が発現するおそれがあります。

もし使用していた場合は、適切な休薬期間の後、ティーエスワンの使用を開始します。

(少なくとも7日間の休薬期間が推奨されています)

ティーエスワンを中止する場合は7日間以上の間隔をあけてから、これらの薬剤の投与を開始します。

 

薬が切り替わる場合は、以前に処方されていた薬が残っていないか確認し、誤って併用しないように指導をしましょう。

 

 

併用注意

・フェニトイン(アレビアチン)

 

テガフールによってフェニトインの代謝が抑制され、フェニトインの血中濃度が上昇するおそれがあります。

フェニトイン中毒(嘔気・嘔吐、眼振、運動障害等)が発現することがあるので、併用する場合は患者の状態に十分注意をします。

 

・ワルファリン(ワーファリン)

機序は不明ですが、併用によりワルファリンの作用が増強するおそれがあります。

定期的な血液凝固能検査等(PT-INR等)の検査を行うようにします。

 

 

患者状態の観察

検査値以外の、患者さんから確認できる点として、以下の臨床症状に注意するようにしましょう。

  • 消化器症状   下痢、悪心・嘔吐、口内炎、食欲不振
       
     
  • 感染症状    発熱、咽頭痛、かぜ様症状
  • 呼吸器症状   咳、息切れ 
  • 皮膚症状    発疹、黄疸
  • 一般症状    PS(パフォーマンスステータス:日常生活の制限の程度)
  • 体重

 

 

yakuzaishi-info.hateblo.jp