代謝拮抗薬(Antimetabolite)は、代謝の過程で生成される代謝物の利用を阻害、拮抗する薬剤です。
代謝拮抗薬の作用
そのため、代謝過程で取り込まれますが、代謝に必要な機能を果たすことができず、代謝を阻害します。
こうして代謝拮抗薬は取り込んだ細胞の分裂や成長を妨げます。
細胞にとって有害であり、臨床では抗生剤や抗悪性腫瘍薬として使用されています。
代謝拮抗薬の種類
核酸(DNA)の合成過程の代謝物と似た構造をしており、核酸合成を阻害することで細胞毒性を示し、抗がん作用が得られます。
合成を阻害する経路の違いから以下の3種類に分類されます。
・ピリミジン代謝拮抗薬
フッ化ピリミジン系
シチジン系
・プリン代謝拮抗薬
代謝拮抗薬の作用機序
ピリミジン代謝拮抗薬
核酸塩基はピリミジン塩基とプリン塩基に分類されます。
ピリミジン塩基(T:チミン、C:シトシン、U:ウラシル)
プリン塩基(A:アデニン、G:グアニン)
ピリミジン代謝拮抗薬はピリミジン代謝を阻害することで、細胞のDNA合成を阻害する薬剤です。
フッ化ピリミジン系とシチジン系にさらに分類されます。
・フッ化ピリミジン系
フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬は、ウラシル(U)に類似した構造をもちます。
フルオロウラシル(5-FU)はウラシルの5位の水素原子がフッ素原子に置き換わった構造をしています。
フルオロウラシルは代謝を受けてFdUMPとなり、チミジル酸合成酵素(TS)を阻害します。
チミジル酸合成酵素が阻害されると、DNA合成の材料として利用されるウラシルを代謝することができなくなり、DNA合成を阻害します。
・シチジン系
シチジン系代謝拮抗薬はシトシン(C)にデオキシリボース(糖)が結合した構造に類似した構造をもちます。
DNAの合成を、DNAポリメラーゼ α という酵素が行っています。
シチジン系代謝拮抗薬は、DNAポリメラーゼ α の働きを阻害したり、謝ってDNA鎖に取り込まれることでDNA鎖の伸長を阻害したりします。
プリン代謝拮抗薬
プリン塩基にはアデニン(A)、グアニン(G)があります。
プリン代謝拮抗薬は、プリン塩基と類似した構造をもちます。
細胞内で代謝され、プリン合成経路のイノシン酸(IMP)と拮抗することで、アデニンやグアニンの合成が阻害され、DNA合成素材が減りDNA合成を阻害します。
葉酸代謝拮抗薬
細胞内でジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)によりテトラヒドロ葉酸となり、DNA合成材料の塩基の生成に関与しています。
この葉酸代謝酵素であるDHRFを阻害する薬剤が葉酸代謝拮抗薬です。
これにより、葉酸の代謝が抑制され、DNA合成に必要な塩基の生成が抑制されます。
まとめ
・代謝拮抗薬にはピリミジン代謝拮抗薬、プリン代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬がある
・ピリミジン代謝拮抗薬はチミジル酸合成酵素やDNAポリメラーゼ αを阻害することでDNA合成を阻害する
・プリン代謝拮抗薬はプリン合成経路のイノシン酸(IMP)と拮抗することでDNA合成を阻害する
・葉酸代謝拮抗薬はジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することでDNA合成を阻害する