薬剤師いんふぉ

薬剤師の学習記録です

腎機能低下による副甲状腺機能亢進症について

以前、副甲状腺ホルモン(PTH:パラトルモン)について以下の記事で述べました。

 

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今回は腎機能低下による副甲状腺機能亢進症について述べていきたいと思います。

 

副甲状腺機能亢進症は、その名の通り、副甲状腺の機能が亢進しており副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌されている状態です。

 

腎機能が低下してくると、カルシウムの吸収を良くするビタミンD3の活性化がうまくできなくなり、腸管からのカルシウム吸収が低下して、血中カルシウム濃度が低下してしまいます。

 

腎臓によるビタミンD3の活性化については以下の記事で述べています。

 

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また、腎機能が低下するとリンを排泄する能力も低下してしまい、高リン血症になってしまいます。

 

これらの低カルシウム血症、高リン血症の状態が副甲状腺を刺激し、この状態を改善しようとPTHの分泌が亢進されるようになります。

 

腎機能が低下すると、血中カルシウム濃度、血中リン濃度を正常に保とうと、PTHの分泌がずっと続いた状態になり、副甲状腺が長期間刺激され続けると腫れて肥大してしまいます

 

副甲状腺が肥大し過形成された状態では、PTHが過剰分泌されており、PTHの作用により骨を溶かしてカルシウム濃度を上げようと骨吸収が促進されます。

 

その結果、骨が弱くなり骨折のリスクが生じる他、カルシウムと一緒にリンも溶け出し血管など骨以外の場所(血管等)に沈着すると石灰化が生じてしまいます。

 

PTHはリンの尿中への排泄量を増加する作用もありますが、腎機能が低下しているといくらPTHが分泌されても、リンの排泄は十分されないので状態は改善しません。

その間もリンを排泄させようとPTHの分泌は続き、骨の溶解により血中のリンが増え続けてしまいます。

 

このように副甲状腺自体に問題が無いのに、副甲状腺機能が亢進されている状態を、二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症と言います。

慢性腎不全によるものが最も多いです。

 

また甲状腺腫や遺伝による甲状腺過形成などにより副甲状腺機能が亢進されたものを、原発副甲状腺機能亢進症と言います。

 

副甲状腺機能亢進症は、原発副甲状腺機能亢進症と二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症の2種類に分けられます。

 

腎機能低下による副甲状腺機能亢進症の治療には、活性化ビタミンD3製剤、高リン血症治療薬、そしてシナカルセト(レグパラ)やエボカルセト(オルケディア)のようなカルシウム受容体作動薬が使用されます。

 

カルシウム受容体作動薬の作用機序についてはこちらです。

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  まとめ

・腎機能が低下するとビタミンDの活性化が行われにくくなり、血中カルシウム濃度が低下し、リンの排泄能力が落ちることで高リン血症となってしまう

・腎機能が低下すると、血中カルシウム濃度、血中リン濃度を正常に保とうと、PTHの分泌がずっと続いた状態になり、副甲状腺が長期間刺激され続けて肥大してしまう

副甲状腺が肥大し過形成された状態では、PTHが過剰分泌されている

・腎機能低下による副甲状腺機能亢進症の治療には、活性化ビタミンD3製剤、高リン血症治療薬、カルシウム受容体作動薬が使用される

 

 

 

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