甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモンが過剰に作られる状態であり、代表的なものとしてバセドウ病があります。
過剰に分泌された甲状腺ホルモンにより、手指振戦、動機、頻脈、発汗、倦怠感、眼球突出などの症状が生じてしまいます。
薬物療法では、主に抗甲状腺薬であるチアマゾール(メルカゾール)、プロピルチオウラシル(プロパジール)が使用されています。
反対に甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる甲状腺機能低下症では、徐脈、冷え、皮膚乾燥、浮腫、低血圧、倦怠感等の症状が現れます。
代表的な疾患に橋本病があります。
薬物治療では、T4製剤であるレボチロキシン(チラーヂン)を使用した補充療法が行われます。
これらの甲状腺機能に異常のある患者さんに対して、含嗽剤であるイソジンガーグル液(有効成分:ポビドンヨード)が慎重投与となっています。
有効成分であるポビドンヨードは構造式の中にヨウ素を含んでいます。
ポビドンヨードは水の中でヨウ素を遊離し、遊離したヨウ素が水と反応して高い殺菌性を示す化合物が生成します。
イソジンガーグル液に含まれるヨウ素が殺菌、消毒作用を示しています。
甲状腺ホルモンの原料はヨウ素であり、ヨウ素の過剰摂取により甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症を起こしてしまうことが知られています。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料になるのですが、過剰なヨウ素摂取は甲状腺ホルモンの分泌を抑制します。
甲状腺に異常のない方ではヨウ素を多量に摂取しても影響はありませんが、甲状腺機能に異常のある方では、血中ヨウ素の調節ができず甲状腺ホルモン関連物質に影響を与えてしまうおそれがあります。
うがい液に含まれるヨウ素でも甲状腺に影響を与えてしまうおそれがあります。
喉の粘膜からもヨウ素は吸収されます。
イソジンガーグル液だけでなく、市販のヨウ素を含む「喉スプレー」などにも注意が必要です。
また、アズレン系のうがい薬にはヨウ素が含まれていませんので、甲状腺機能に異常がある方には、こちらを使用する方がヨウ素による影響が無いので安全です。
アズレン系のうがい薬には、アズノールうがい液(アズレンスルホン酸ナトリウム)などがあります。
ですが、アズレン系のうがい薬には殺菌作用はなく、消炎作用を期待しての使用となりますので注意が必要です。
また、ヨウ素を含むうがい薬や食品が全く摂取できないというわけではありません。
神経質になりすぎず、過剰摂取を避けるようにしましょう。
まとめ
・ヨウ素は喉の粘膜からも吸収される
・甲状腺機能に異常のある方では、血中ヨウ素の調節ができず甲状腺ホルモン関連物質に影響を与えてしまうおそれがある
・アズレン系のうがい薬はヨウ素を含んでおらず、安全に使用することができる。