シスプラチン(CDDP)は白金製剤に分類される抗悪性腫瘍薬です。
白金製剤は、構造中に白金(Pt)を含んでおり、DNA合成を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。
シスプラチンは多くのがんに有効性が認められており、広く使用されている抗悪性腫瘍薬ですが、副作用の1つに腎障害があります。
腎障害が起こる原因
シスプラチンは胆汁中への分泌などが少なく、尿中から排泄される腎排泄型の薬剤です。
腎障害はシスプラチンが近位尿細管細胞を障害することで生じてしまいます。
腎障害予防のハイドレーション
ハイドレーションとは補水、水分補給の意味です。
シスプラチンによる腎障害を予防するため、投与前後は輸液によるハイドレーションを行います。
投与前に1000~2000mlの輸液を投与し、投与終了後にも1000~2000mlの輸液を投与します。
これにより、投与前から尿細管内の流量が多い状態になり、腎臓でのシスプラチン濃度が下がり、近位尿細管とシスプラチンの接触時間を短縮することができ、腎障害が軽減されます。
この腎障害には遊離型のシスプラチンが主に関与していると考えられています。
遊離型シスプラチンの血中濃度は投与終了後2時間程度で測定限界以下まで低下します。そのため投与開始から2時間の利尿が重要と言われています。
尿量の確保
輸液を投与していても、尿量が確保できているか注意が必要です。
輸液による強制利尿を行っても十分な尿量がない場合は、マンニトールやフロセミド等の利尿剤を追加して尿量を増やします。
ショートハイドレーション
従来の輸液投与によるハイドレーションを行うと、10時間以上の時間がかかってしまいます。
そこで、少量で短時間ですむショートハイドレーション法が導入されました。
水分を経口摂取することで、輸液の投与量を減らして投与時間が短くなるので、外来での治療も行いやすくなりました。
経口で摂取する水分の目安は1L程度と言われています。
ですが、ショートハイドレーション法を行う条件がいくつかあります。
・腎機能の状態が良好
・水分の経口摂取に対する理解力がある
・心機能が低下していない
・全身状態が良好
外来でのシスプラチン投与は、点滴での拘束時間短縮のため、ショートハイドレーション法が推奨されています。
腎機能や患者の理解力などを考慮して、尿量が確保できるか判断しなくてはいけません。
またハイドレーションに加えて、腎保護の為のマグネシウム投与も推奨されています。