BCAA(Branched Chain Amino Acid:分岐鎖アミノ酸)は、必須アミノ酸の中で炭素骨格が直鎖ではなく分岐しているバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類です。
必須アミノ酸ですので、自分では作ることができません。
肝不全の状態では、このBCAAの利用が高まり、BCAAが減ってしまうことが問題となります。
アミノ酸にはBCAAの他にAAA(aromatic amino acid:芳香族アミノ酸)があり、フェニルアラニン、チロシンが該当します。
肝臓の機能が低下してくると、肝臓の仕事を筋肉が代わりに行うようになります。
肝臓で代謝し無毒化することができなかったアンモニアが筋肉へ到達すると、そこでBCAAを利用してアンモニアを無毒化します。
また肝臓がエネルギーの産生をする能力が低下しているため、筋肉が代わりにエネルギーを産生するのですが、その際にBCAAが使用されます。
その他に肝臓で蛋白(アルブミン)を合成することができなくなってくると、筋肉でBCAAを使用して蛋白を合成するようになります。
肝臓ではBCAAとAAAの両方を利用できますが、筋肉はBCAAしか利用することができません。
このように、肝機能が低下してきて筋肉が肝臓の仕事を行うようになるとBCAAの消費だけが増えてBCAAが不足した状態となります。
BCAA/AAAで表した比率を「フィッシャー比」と言います。
肝機能が低下してくると、BCAAが低下してAAAが増えるため、フィッシャー比は低くなります。
AAAが肝臓で代謝されず増えた状態が続くと、脳内へ移行する量が増えてしまい神経伝達物質の異常が生じてしまいます。
また、BCAAの消費が続き、BCAAが不足するとアンモニアの処理を行うことができなくなり、高アンモニア血症を引き起こし肝性脳症が生じるおそれがあります。
フィッシャー比が低下すると、このような危険があります。
食事から大量のBCAAを摂取することは難しいため、BCAA製剤の摂取が必要になります。
BCAA製剤を摂取し、フィッシャー比を正常に近づけることにより、栄養状態の改善や、肝性脳症の軽減が期待できます。
タンパク質が分解されアンモニアが生じるため、タンパク質の量を制限した食事をすることがあります。
肝性脳症のリスクを減らすことはできますが、低タンパク食は低栄養状態へとつながってしまうおそれがあります。
BCAA製剤を摂取することで、アンモニア解毒に使用されるBCAAを補うことができ、栄養状態の改善も期待ができます。
BCAA製剤にはリーバクトやアミノレバンがあり、これらの違いについてはこちらにまとめています。
まとめ
・BCAAは分岐鎖アミノ酸でありバリン、ロイシン、イソロイシンがある
・BCAAは筋肉でアンモニア分解、エネルギー産生、タンパク合成に利用される
・BCAA/AAA=フィッシャー比であり、肝機能が低下するとフィッシャー比も低下する
・フィッシャー比が低下すると肝性脳症などのリスクが高くなる
・BCAA製剤を摂取することで、フィッシャー比を改善する