どんな疾患か
ライ症候群は、小児にみられる肝臓の脂肪浸潤を伴う重篤な急性脳症を起こす疾患です。
原因は不明ですが、風邪やインフルエンザ、水痘などのウイルス感染後、特にアスピリンを服用している小児に発症し、アスピリンの使用が引き金になると考えられています。
まれな病気ですが後遺症が残ったり、生命に関わることもあります。
成人のライ症候群は小児よりも起こりにくく、発症しても小児ほど問題とはなりにくいです。
症状
風邪やインフルエンザ、水痘などのウイルス感染症の症状が先行して生じ、3~7日後に激しい吐き気や嘔吐があらわれます。
そして間もなく、混乱や痙攣、意識障害などの精神症状が起こります。
さらに痙攣発作や昏睡から死亡や重篤な後遺症を残すこともあります。
検査値では、高アンモニア血症、低血糖が起こり、ASTやALT、LDH、CKは上昇します。
急性脳症と肝臓への脂肪沈着が問題となります。
治療
ライ症候群に対して特別な治療法はまだありません。
集中治療室で脳圧を下げる処置をしたり、血糖値を正常に戻したりします。
肝機能障害から止血機能が低下し、出血傾向にある場合はビタミンKや新鮮凍結血漿を使用します。
解熱鎮痛薬との関連
アメリカで、アスピリンの使用とライ症候群の関連を疑わせる疫学調査が発表されました。
これを受け、日本でも調査研究を行いましたが、解熱鎮痛薬とライ症候群との関連性は確認できませんでした。
ですが、アメリカにおける疫学調査の結果を踏まえ、因果関係は不明ですが、日本でもアスピリン等のサリチル酸系薬剤は「15歳未満の水痘、インフルエンザ患者に投与しないことを原則とする」措置がとられました。
さらにジクロフェナクナトリウムでもサリチル酸系薬剤と同じような発生傾向がみられたのと、小児の場合は他の解熱鎮痛薬でも代替可能であることから、「小児のウイルス性疾患に対して原則投与しない」よう添付文書に記載されています。
現在では小児に対してアスピリンやジクロフェナクはほとんど使用されていません。
しかし、市販のものも含め、成人用の風邪薬にはアスピリンを含んだものもあり、小児にも服用させてしまわないように注意が必要です。