メトホルミン(メトグルコ)はビグアナイド系経口血糖降下薬です。
作用機序についてはこちらでまとめました。
単独使用では低血糖症状を起こしにくく安全性の高い薬剤ですが、乳酸アシドーシスという頻度は低いものの重篤な副作用が生じることがあり注意が必要です。
乳酸アシドーシスとは乳酸の産生増加や代謝の低下により、血液中の乳酸が異常に増加し、血液が酸性化(アシドーシス)してしまう疾患で予後不良となることが多いです。
メトホルミンの薬理作用でも述べましたが、メトホルミンは肝臓で乳酸などから糖(グルコース)を産み出す糖新生を抑制することで血糖降下作用を示します。
乳酸からの糖新生が抑制されることで、乳酸が貯留傾向になり、血液中の尿酸値が上昇してしまうことにより乳酸アシドーシスが生じてしまいます。
乳酸アシドーシスの初期症状では
悪心、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が生じます。
進行してくると
過呼吸、傾眠、低血圧、低体温、ショック状態、昏睡といった症状が生じて大変危険です。
初期症状の段階で見つけることが望ましいですが、メトホルミン初期投与時や増量時によくみられる通常の消化器症状との判別が難しいです。
血液中の乳酸値やpHの測定が重要です。
患者さんにも服薬指導時にこれらを踏まえた説明が必要です。
日本糖尿病学会の「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」では、乳酸アシドーシスの発生に下記のリスク要因があるとしています。
乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴
・腎機能障害患者(透析患者を含む)
・脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など
・心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者
・高齢者
腎機能が低下した方では、メトホルミンの排泄が低下してしまいます。
脱水やシックデイによる脱水症状では、腎臓への血流量が減少し、腎機能が一時的に悪化してしまうことでメトホルミンの排泄低下が生じてしまいます。
過度のアルコール摂取は乳酸が体内に溜まりやすくしてしまいます。
心筋梗塞や血管障害を伴う循環不全や呼吸器疾患は、低酸素症をきたす病態であり乳酸アシドーシスの危険因子となります。
肝機能が低下していると乳酸を代謝する力が落ちてしまいます。
高齢者では腎機能、肝機能等が低下していることが多く、また脱水症状を起こしやすいので、腎機能等を確認しながら慎重に投与をしなくてはいけません。
メトホルミンとヨード造影剤の併用についてはこちらです。
まとめ
・メトホルミンにより糖新生が抑制され乳酸が蓄積すると、乳酸アシドーシスが生じてしまうおそれがある
・乳酸アシドーシスは頻度は低いが重篤な副作用である
・腎機能、肝機能低下、脱水、高齢者などの条件は乳酸アシドーシスの危険因子となる