ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬の特徴的な副作用に空咳があります。
空咳とは痰の出ない咳のことですね。
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系
アンジオテンシンノゲン → アンジオテンシンⅠ → アンジオテンシンⅡ
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(ACE)
上記の経路でアンジオテンシンⅡが生成されると、血管の収縮やアルドステロンの分泌が促進されて血圧が上昇してしまいます。
ACE阻害薬はアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することで、アンジオテンシンⅡが産生されるのを抑制することで降圧作用を示すお薬でした。
レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)とは別にカリクレイン・キニン系という経路もあります。
カリクレイン・キニン系
キニノーゲン → ブラジキニン → 不活性ペプチド
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カリクレイン キニナーゼⅡ
こちらの経路ではブラジキニンが生成されます。
ブラジキニンは血管を拡張させる作用があり、それにより血圧を低下させます。
このブラジキニンはキニナーゼⅡにより分解されてしまいます。
このキニナーゼⅡは先ほどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)と同じものになります。
ACE阻害薬はACEを阻害しますが、同じものであるキニナーゼⅡの働きも阻害するのでブラジキニンは分解されなくなりブラジキニン量は上昇します。
血管を拡張するブラジキニン量が増えるので血圧は下がりますが、気管支を刺激する作用もありサブスタンスPという物質が増加します。
サブスタンスPは神経に作用する物質で、咳をしたり、食べ物をきちんと飲み込んだりできるよう作用する物質です。
ブラジキニンがサブスタンスPを増やすため空咳の症状が生じてしまうのですね。
空咳の症状が生じてしまった場合は、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)に変更するのが一般的です。
ARBはアンジオテンシンⅡが受容体に作用するのを抑える薬であり、ACEを阻害しないため、ブラジキニンの量が増えてしまうこともありません。
ACE阻害薬による空咳は投与中止後すぐに消失がみられ、また服用を続けた場合にも次第に消失していくケースが多いと言われています。
ACE阻害薬には以下のような薬剤があります。
・イミダプリル(タナトリル)
・エナラプリル(レニベース)
・ペリンドプリル(コバシル)
・テモカプリル(エースコール)
・アラセプリル(セタプリル)
・カプトプリル(カプトリル)
・リシノプリル(ロンゲス/ゼストリル)
・キナプリル(コナン)
まとめ
・ACE阻害薬がブラジキニンの分解を抑制するため空咳が生じてしまう
・空咳が生じてしまった場合は、ブラジキニンに影響のないARBに変更するのが一般的である