ミラクリッド(一般名:ウリナスタチン)は蛋白分解酵素阻害剤です。
適応症
急性膵炎(外傷性、術後及びERCP後の急性膵炎を含む)
慢性再発性膵炎の急性増悪期
急性循環不全
(出血性ショック、細菌性ショック、外傷性ショック、熱傷性ショック)
急性膵炎について
急性膵炎は膵臓に生じた突然の炎症であり、初期症状は腹部の激痛です。
主な原因はアルコールと胆石です。
アルコールは膵細胞を傷害したり、膵液の分泌を増やすことで膵管内圧が高まり膵炎を起こすと考えられています。
胆石は総胆管の中に入り、管を詰まらせてしまうことがあります。
総胆管には膵管と合流している部分があり、そこが胆石で詰まってしまうと膵液の排出が行えず膵液が膵管内に残り、膵臓を傷害してしまいます。
また、手術や内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)により排出口に影響があると、膵液の排出がスムーズに行われず膵炎につながってしまいます。
ACE阻害薬やフロセミド、バルプロ酸ナトリウムなど薬剤性の膵炎が生じる場合もあります。
作用機序
膵炎はトリプシンをはじめとする膵液内の消化酵素が活性化することにより膵臓自体が消化され傷付く疾患です。
(トリプシン:膵液に含まれる消化酵素の一種。蛋白質を分解します。)
ミラクリッドはトリプシンやキモトリプシン、エラスターゼなどの蛋白分解酵素を阻害することで膵臓が消化酵素に攻撃されるのを防ぎ、膵炎の急性症状を改善します。
さらにミラクリッドはライソゾーム膜安定化作用をもちます。
ライソゾームは細胞内で不要となった蛋白質などを分解しています。
ミラクリッドの膜安定化作用によりライソゾームの働きが抑制されます。
そして心筋抑制因子(MDF)産生抑制作用ももちます。
心筋抑制因子(MDF)はショック時に生じてくる、心筋収縮抑制作用をもつ物質です。
これらの作用ももつので、ミラクリッドは急性循環不全にも使用されています。