オレンシア(一般名:アバタセプト)はT細胞選択的共刺激調節剤であり生物学的製剤の一種です。
関節リウマチの治療等で使用されています。
生物学的製剤とは
生物学的製剤とは、生体が作る物質を薬剤として利用したものです。
化学的に合成したもの(化合物)ではなく、生体由来の物質である抗体(蛋白質)やホルモン、サイトカインなどを人工的(遺伝子組み換え技術や細胞培養技術)に製造したものになります。
自己免疫疾患や癌などの治療に用いられています。
オレンシアの特徴
オレンシアはT細胞の働きを抑制することで、炎症性サイトカイン(TNFα やIL-6)の産生を抑えます。
他の生物学的製剤のように、TNFα やIL-6の働きを阻害するのではなく、その上流にあるT細胞の働きを抑えることで効果を発揮します。
炎症性サイトカインとは
サイトカインとは細胞から分泌される蛋白質であり、細胞同士の情報伝達のような役割をしており、免疫反応の増強や抑制、細胞増殖などに関与しています。
炎症性サイトカインとは、身体の様々な炎症反応を引き起こすサイトカインのことです。
腫瘍壊死因子(TNT)、インターロイキン(IL-1、6、8)等があります。
T細胞とは
T細胞はリンパ球の一種であり、前駆細胞が胸腺で分化・成熟するため、胸腺(Thymus)のTを取ってT細胞と名付けられました。
T細胞はヘルパーT細胞と細胞障害性T細胞(CTL)の2種類に大きく分類されます。
ヘルパーT細胞は抗原提示細胞から抗原情報を受け取り、サイトカインなどの免疫活性化物質を産生して、攻撃の指示を出します。
抗原提示細胞(APC:antigen presenting cell)は細胞表面に抗原を提示し、T細胞を活性化します。
樹状細胞や単球・マクロファージ、B細胞が該当します。
細胞障害性T細胞(CTL)はキラーT細胞とも呼ばれます。
がん細胞やウイルス感染細胞など、体にとって異物となる細胞を破壊する細胞です。
ヘルパーT細胞からの指示を受けて、活性化されます。
オレンシアの作用機序
抗原提示細胞 → ヘルパーT細胞の活性化 → サイトカインの産生
抗原提示細胞から抗原が提示されると、ヘルパーT細胞が活性化しサイトカインが産生されます。
免疫の活性化が過剰となると、自己免疫疾患へとつながってしまいます。
オレンシアは抗原提示細胞とヘルパーT細胞の間の伝達を阻害します。
T細胞が活性化するには、抗原提示細胞からのT細胞受容体(TCR)を介した抗原刺激と、もう一つCD28を介した刺激の2種類の刺激が必要です。
CD28はT細胞上にある補助刺激分子です。
ヘルパーT細胞CD28と抗原提示細胞のCD80/CD86が結合すると、共刺激シグナルがT細胞へ伝達されます。
オレンシアは抗原提示細胞のCD80/CD86と結合することで、CD28を介した共刺激シグナルを阻害します。
T細胞は抗原刺激だけでは活性化することができず、これによりサイトカインの産生が抑制されます。
オレンシアの剤型には
・点滴静注用
・皮下注シリンジ
・皮下注オートインジェクター
があります。