分子標的薬はがん細胞が特異的に発現している分子を標的にして攻撃します。
増殖を開始するシグナル伝達を抑え、がん細胞の増殖や血管新生を阻害したりします。
殺細胞性抗がん薬は細胞分裂している がん細胞を攻撃するものでしたが、分子標的薬は細胞分裂のシグナルを抑えて、細胞分裂を起こさせないようにする薬です。
分子標的薬には、「抗体薬」と「小分子薬」の2種類があります。
抗体薬
抗体薬について
がん細胞の表面に過剰に発現している分子(抗原)に対して結合することで抗腫瘍効果を発揮します。
抗体薬は分子量が大きく、細胞内に入ることができません。
細胞膜表面の分子に対して作用をします。
モノクローナル抗体
この抗体はモノクローナル抗体と呼ばれるものです。
モノクローナル抗体は1種類だけの抗体産生細胞が作った抗体のコピーです。
モノクローナル抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体があります。
キメラ抗体はマウス由来の成分が33%、ヒト化抗体ではマウス由来の成分が10%含まれています。
マウス抗体は人の体内に入ると作用減弱や半減期の短縮が起こったり、異物と認識されてアレルギー症状を起こしてしまうことが問題でした。
近年では技術の進歩により、ヒト抗体の割合が高いものが主流となっています。
抗体薬の例
・抗HER2抗体薬 トラスツズマブ(ハーセプチン)
・抗VEGF抗体薬 ベバシズマブ(アバスチン)
・抗EGFR抗体薬 セツキシマブ(アービタックス)
・抗CD抗体薬 リツキシマブ(リツキサン)
小分子薬
小分子薬について
小分子薬は分子量が小さく、細胞内に入り込むことができ、血液脳関門も通過します。
がん細胞の増殖に関わるタンパク質に結合して、シグナルの伝達を止めて細胞増殖を抑制します。
分子標的薬は標的となる分子をもつ細胞だけに作用するお薬ですが、正常細胞も標的分子をもっていた場合、攻撃を受けてしまいます。
また、小分子薬は標的となるタンパク質だけを選択する精度が比較的低いため、標的以外に作用して生じる副作用に注意しなくてはいけません。
小分子薬の例
・EGFR阻害薬 ゲフィニチブ(イレッサ)
・マルチキナーゼ阻害薬 ソラフェニブ(ネクサバール)
・mTOR阻害薬 エベロリムス(アフィニトール)
・CDK4/6阻害薬 アベマシクリブ(ベージニオ)