前立腺肥大症の薬物治療において、α1遮断薬が第一選択薬です。
α1受容体は膀胱頸部や前立腺に多く存在しており、ノルアドレナリンが結合すると膀胱頸部や前立腺内の平滑筋が収縮して、尿道の閉塞が生じてしまいます。
α1受容体遮断薬がα1受容体に作用すると、膀胱頸部および前立腺内の平滑筋が弛緩して、尿道抵抗を小さくして排尿障害を改善します。
前立腺肥大腫がある場合は、前立腺の縮小効果がある5α還元酵素阻害薬のデュタステリド(アボルブ)を併用する場合があります。
α1受容体にはα1A、α1B、α1Dのサブタイプがあります。
α遮断薬がどの受容体に作用しやすいかで、少し作用の仕方や副作用に違いが出てきます。
α遮断薬には
シロドシン(ユリーフ)
ナフトピジル(フリバス)
タムスロシン(ハルナール)
テラゾシン(バソメット/ハイトラシン)
ウラピジル(エブランチル)
プラゾシン(ミニプレス)
があり、
シロドシン・ナフトピジル・タムスロシンは第二世代
テラゾシン・ウラピジル・プラゾシンは第一世代に分類されます。
α1受容体の3つのサブタイプのうち、α1Bは血管平滑筋に多く、α1Aとα1Dは泌尿器に多く分布しています。
第一世代の薬はα1受容体のサブタイプへの選択性が低く、α1Bにも作用するため、血管平滑筋が弛緩して降圧作用を示します。
そのため「前立腺肥大症に伴う排尿障害」の適応だけでなく、その降圧作用から高血圧症の適応も持ちます。
第一世代の薬は血圧低下に注意が必要です。
α1A、α1B、α1D全てに作用してしまうのですね。
前立腺肥大症の治療だけをしたい方にとって、この降圧作用は副作用になってしまいます。
第二世代の薬は、α1A、α1Dへの選択性が高く、血圧への影響が少ないため起立性低血圧の副作用も生じにくいものとなっています。
前立腺肥大症による排尿障害を治療だけをしたい方にとっては、こちらの方が望ましい薬剤になります。
こうした点から、第二世代のα1遮断薬が選ばれることが多いです。
次は、α1A、α1Dの違いや、第二世代α1遮断薬(シロドシン、ナフトピジル、タムスロシン)の違いについても見ていきたいと思います。
まとめ
・α1受容体遮断薬がα1受容体に作用すると、膀胱頸部および前立腺内の平滑筋が弛緩して、尿道抵抗を小さくして排尿障害を改善する
・α1受容体にはα1A、α1B、α1Dのサブタイプがある
・α1Bは血管平滑筋に多く、α1Aとα1Dは泌尿器に多く分布している
・第一世代の薬はα1受容体のサブタイプへの選択性が低く、α1Bにも作用するため、血管平滑筋が弛緩して降圧作用を示す(テラゾシン・ウラピジル・プラゾシン)
・第二世代の薬は、α1A、α1Dへの選択性が高く、血圧への影響が少ないため起立性低血圧の副作用も生じにくいものとなっている(シロドシン、ナフトピジル、タムスロシン)