薬剤師いんふぉ

薬剤師の学習記録です

ウルソデオキシコール酸(ウルソ)の肝保護作用

ウルソデオキシコール酸(ウルソ)は利胆剤であり、古くから肝臓を守る薬として使用されてきました。

 

利胆とは胆汁の分泌を促す作用のことをいいます。

 

この作用により、胆汁の流れを良くしたり、胆石を溶かしたりする作用、肝臓の機能を改善したり、消化不良を改善する効果が得られます。

 

今回はこれについて詳しく見ていきましょう。

 

ウルソデオキシコール酸はもともと人の体に存在する胆汁酸の一種です。

 

胆汁酸は食物中にある脂質の吸収を補助する物質です。

肝臓で作られ胆嚢に貯蔵されており、胆管を通って十二指腸から分泌されています。

 

ウルソデオキシコール酸には胆汁分泌を促進する作用(利胆作用)があります。

そのため利胆薬、あるいは催胆薬と呼ばれています。

 

この利胆作用により、胆汁の分泌が促進されるため胆汁うっ滞が改善されます。

そして胆汁うっ滞による肝障害も改善されます。

後に述べますが、疎水性の高い細胞障害を起こすおそれのある胆汁酸が、うっ滞しないようになることで肝臓が保護されます。

 

脂質の吸収を助ける胆汁酸が増えるので、脂質の吸収も改善されます。

ですが、元々胆汁の分泌に問題がない方では、この効果はあまり期待できません。

 

胆汁酸にはウルソデオキシコール酸の他にも4種類あり、全部で5種類です。

 その中で疎水性の高いものと低いものがあります。

 

疎水性が高いものは水とは混ざりにくく、油とは混ざりやすいので脂質と結合しやすく、脂質を吸収する作用が高いですが、肝細胞を障害してしまうことが解っています。

 

疎水性が低いものは細胞毒性も低いです。 

ウルソデオキシコール酸は5種類の胆汁酸のうち、一番疎水性が低いものになり、他の胆汁酸より細胞障害性も低いです。

 

ウルソデオキシコール酸の投与することで、細胞障害性の高い疎水性の胆汁酸と置き換わり、胆汁酸の割合を変えます。

 

細胞障害性の低いウルソデオキシコール酸の割合が増えることで、肝臓を保護する効果が得られます。

 

また、ウルソデオキシコール酸にはサイトカインやケモカインといった、肝臓の炎症を引き起こす物質の産生を抑制する作用もあることが解っています。

 

上記で述べましたように、疎水性が高い胆汁酸と疎水性が低いウルソデオキシコール酸が置き換わるので、コレステロールの吸収が低下します。

 

これにより胆汁中のコレステロール比率が低下して、コレステロール結石として析出されにくくなるとともに、ミセル化が促進されて結石が溶解されます。

 

これらの作用によりウルソデオキシコール酸(ウルソ)は肝臓を保護してくれています。

副作用も少なく安全性の高い薬剤です。

生じやすい副作用としては下痢症状があります。

 

  

  まとめ

・ウルソデオキシコール酸(ウルソ)は、胆汁の分泌を促す利胆剤である

・胆汁うっ滞が改善され、胆汁うっ滞による肝障害も改善する

・ウルソデオキシコール酸は疎水性が低く、細胞毒性の低い胆汁酸である

・肝臓の炎症を引き起こす物質の産生を抑制する

 

 

 

 

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