ナルフラフィン(レミッチ/ノピコール)は透析患者や慢性肝疾患患者の掻痒症に使用されます。
透析治療を受けている方や慢性肝疾患がある方は、全身性の強い痒みが生じてしまうことがあります。
透析患者の約70%に痒みが生じていると言われています。
皮膚に生じる末梢性の痒みと、全身に生じる中枢性の痒みがあります。
【末梢性の痒みの原因】
・尿毒症性物質の蓄積や、血中カルシウム、リンの高値
尿毒症性物質が痒みの原因と考えられており、他にも血液中のカルシウムやリンが高値となると皮膚に沈着して痒みが生じてしまうことがあります。
・メディエーターの過剰産生
血液が透析回路や透析膜と接触して、ヒスタミンやサブスタンスP、サイトカインなどのメディエーターが過剰に産生されることで痒みが生じてしまいます。
・皮膚の乾燥
透析患者は皮膚が乾燥した状態にあります。
乾燥した皮膚はバリア機能が低下しており、外部からの刺激に弱くなっています。
また、皮膚が乾燥した状態では痒みを伝える神経(C線維)が皮膚の表面へ伸びやすくなるので、痒みを感じやすくなってしまいます。
【中枢性の痒み】
・オピオイド物質の増加
内因性オピオイドであるβ-エンドルフィンなどが増加すると、中枢性の痒みが生じてしまいます。
また、慢性肝疾患による痒みは中枢性の痒みであると言われています。
内因性オピオイドのエンケファリンなどが関与していると考えられています。
ナルフラフィンは中枢性の痒みに対して効果を発揮します。
β-エンドルフィンやエンケファリンなどの内因性オピオイドは、オピオイドμ(ミュー)受容体を刺激し、その結果、痒みが生じてしまいます。
オピオイドκ(カッパ)受容体は、オピオイドμ受容体を抑制する働きがあります。
透析患者や慢性肝疾患患者では、このオピオイドμ受容体とオピオイドκ受容体のバランスが崩れることで痒みが生じてしまいます。
ナルフラフィンはオピオイドκ受容体を刺激することで、オピオイドμ受容体を抑制して痒みを改善させます。
このようにして、ナルフラフィンは内因性オピオイドによる痒みに対して効果を発揮します。
末梢性の痒みに対しては、抗ヒスタミン薬や外用ステロイド、保湿剤の使用で効果が得られますが、これらは中枢性の痒みは抑制することができません。
そうした際に使用されるのが、オピオイドκ受容体作動薬であるナルフラフィンです。
まとめ
・ナルフラフィンはオピオイドκ受容体作動薬であり、中枢性の痒みを改善する
・内因性オピオイドが増加するとオピオイドμ受容体が刺激され痒みが生じてしまう
・オピオイドκ受容体刺激されるとオピオイドμ受容体を抑制する