今回は基礎的な内容になりますがインクレチン関連薬についてのおさらいです。
まずインクレチンについてです。
インクレチンとは食事の摂取に伴い消化管から分泌され、膵β細胞からのインスリン分泌を促進するホルモンの総称です。
今までに確認されているインクレチンにはGIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)とGLP-1(glucagon-like peptide-1)の2種類があります。
GIPは上部小腸にあるK細胞から、GLP-1は小腸下部にあるL細胞から分泌されます。
それぞれ作用に違いがありますが、どちらも食後のインスリン分泌を促進させる点では共通しています。
インクレチンは血糖値が高い時にだけインスリン分泌を促進させ、血糖値が低いときはインスリン分泌を促進しません。
インクレチンが作用するには血糖値の上昇が必要です。
グルコースの濃度上昇による膵臓のインスリン分泌反応を高めることで、インスリンの分泌を増やしています。
食後のインスリン分泌量の60~70%はインクレチンによるものと考えられています。
2型糖尿病患者では、GIPに対する反応性が低下しておりGLP-1の働きが重要であると考えられています。
ではGLP-1についてみていきましょう。
GLP-1は前に述べたように膵臓のβ細胞にある受容体に結合し、インスリンの分泌を促進させます。
さらに膵臓のα細胞から血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制します。
その他に膵臓以外に働く作用(膵外作用)として、胃運動を抑制して胃内容の排泄を遅延させたり、脳へ働きかけて食欲を低下させる作用もあります。
しかしこのGLP-1はDPP-4(dipeptidyl peptidase Ⅳ)により速やかに分解されてしまいます。
このインクレチン分解酵素であるDPP-4を阻害することでインクレチン濃度を上げる薬剤がDPP-4阻害薬です。
インクレチン濃度を上昇させインスリンの分泌を促進します。
インクレチンは血糖が上昇したときにのみインスリン分泌促進作用を発揮するため、DPP-4阻害薬も血糖に依存して作用します。
血糖が高いときにだけ作用するのでSU剤に比べて膵臓への負担は少なく低血糖も単剤では起こしにくいです。
次にGLP-1受容体作動薬についてです。
構造はGLP-1に類似しておりGLP-1アナログと呼ばれます。
作用はGLP-1とほとんど同じで、DPP-4により分解されにくい構造となっています。
GLP-1受容体作動薬は膵β細胞にあるGLP-1受容体を刺激することでインスリンの分泌を促進します。
そしてDPP-4阻害薬と同様に血糖値が高いときにのみインスリン分泌促進作用を発揮します。
そのため単剤では低血糖を起こしにくいです。
DPP-4阻害薬とは違い、体から作られるGLP-1以上に受容体へ作用するので食欲抑制や胃排出抑制などの膵外作用も発揮し体重の減少も期待できます。
胃排出抑制作用により悪心・嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状がDPP-4阻害薬に比べて生じやすいです。
効果はDPP-4阻害薬よりも強いとされていますが、投与方法は現在のところ皮下注射しかありません。
では最後にそれぞれの製剤一覧です。
DPP-4阻害薬
・シタグリプチン(ジャヌビア/グラクティブ)
・ビルダグリプチン(エクア)
・アログリプチン(ネシーナ)
・リナグリプチン(トラゼンタ)
・テネリグリプチン(テネリア)
・アナグリプチン(スイニー)
・サキサグリプチン(オングリザ)
・トレラグリプチン(ザファテック) 週1回タイプ
・オマリグリプチン(マリゼブ) 週1回タイプ
GLP-1受容体作動薬
・リラグルチド(ビクトーザ)
・エキセナチド(バイエッタ)
・エキセナチド(ビデュリオン) 週1回タイプ
・リキシセナチド(リキスミア)
・デュラグラチド(トルリシティ) 週1回タイプ
まとめ
・インクレチンは食事の摂取により消化管から分泌され、インスリンの分泌を促進する
・インクレチンは血糖値が高いときにだけ働く
・インクレチン関連薬にはDPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬がある
・DPP-4阻害薬は経口薬、GLP-1受容体作動薬は注射薬である
・GLP-1受容体作動薬は食欲抑制や胃排出抑制などの膵外作用も発揮し体重の減少も期待できる