薬剤師情報局

薬剤師の学習記録です

トルバプタン(サムスカ)開始時の入院について

トルバプタン(サムスカ)はバソプレシンV2受容体拮抗薬であり、心不全や肝不全による体液貯留、常染色体優性多発性嚢胞腎に対して使用されている薬剤です。

 

利尿剤の一種ですが、この薬を導入する際には入院が必要となります。その理由の前に作用機序のおさらいからしておきましょう。

 

トルバプタンは腎臓の集合管で、バソプレシン(抗利尿ホルモン)がバソプレシンV2受容体に結合するのを抑えることで水の再吸収を阻害します。

 

バソプレシンバソプレシンV2受容体に結合すると、水チャネル(APQ2)が開いて水が再吸収(尿量の減少)されるようになることからバソプレシンは抗利尿ホルモンと呼ばれています。

 

バソプレシンの結合を阻害することで、水が再吸収されなくなり排泄が促進します(尿量の増加)。

 

その際に、水のみが選択的に排泄され電解質の排泄は増加しません。他の利尿剤と異なり、Naなどの電解質排泄には影響を与えずに水のみを排泄させる薬剤です。

 

このように水の排泄のみを促進させるのですが、ナトリウムは排泄されないため高ナトリウム血症に注意が必要になります。

 

この高ナトリウム血症になっていないかをみるために、トルバプタン導入時に入院が必要となります。

 

トルバプタン(サムスカ)導入時には、過剰な利尿による脱水や高ナトリウム血症が生じるおそれがありますので、必要な水分補給を行いながら体重や血圧、脈拍、尿量等を測定します。

 

特に開始後24時間以内には水利尿効果が強くあらわれるので、1週間程度は数時間おきの血清ナトリウム濃度の測定が必要とされています。

 

数時間毎のこまめな血清ナトリウム測定のため、入院が必要なのですね。

入院下でしっかりと測定を行いながら投与をします。

 

患者からは口渇や意識がもうろうとするといった症状が生じていないか確認をします。

 

高ナトリウム血症以外にも、カリウム血症重篤な肝機能障害が生じるおそれもあるため、これらの検査も行うようにとされています。

 

またトルバプタンは第一選択の利尿剤とせず、他の利尿剤の処方に追加して使用します。

他の利尿剤との併用が原則となります。

 

水のみを排泄させるトルバプタンですが、他の利尿剤と併用することで電解質のバランスを調節します。

 

トルバプタン(サムスカ)はこのように電解質の排泄は増加しないので、低ナトリウム血症や低カリウム血症にはなりませんが、濃度が上昇することにより高ナトリウム血症カリウム血症の心配があるため入院して測定を行いながら使用を開始する薬剤です。

 

 

  まとめ

・トルバプタンは水のみを排泄する利尿剤

電解質は排泄されないため、高ナトリウム血症になっていないかを定期的に調べるため導入時に入院をする

・トルバプタンは他の利尿剤と併用して使用する