レボドパ(L-dopa)製剤は最も代表的なパーキンソン病治療薬です。
脳内の不足したドパミンを補ってくれます。
レボドパはドパミンの前駆物質であり、脳に入ってからドパミンへと変換されます。
ドパミンをそのまま投与しても血液脳関門(BBB)を通過できないため、脳に入ってから変換されるレボドパを使用しているんですね。
レボドパは運動症状改善効果が高く、パーキンソン病の治療において最も有用な薬剤であるとされています。
ですが、副作用として消化器症状(悪心、嘔吐)、不随意運動(ジスキネジア)、精神症状(幻覚、來興奮、せん妄)、循環器症状(不整脈、立ちくらみ)、悪性症候群などがあり注意が必要です。
そして長期投与の際に「wearing-off現象」、「on-off現象」が問題となってきます。
まずwearing-off現象についてですが、これはレボドパの効果時間が短縮し、次の服用までにレボドパの効果が切れてしまう現象です。
レボドパの服用を数年続けていたが、効果時間は1~2時間に短縮されてしまった。
これでは次の服用までに効果が切れてしまいますね。
wearing-off現象の原因はドパミン細胞の変性が関与していると考えられています。
投与されたレボドパはドパミン細胞でドパミンに変換され放出されますが、その際放出されなかったドパミンは貯蔵されています。
その後、貯蔵されていたドパミンも放出されるため、ドパミンの効果は長く続きます。
ですがドパミン細胞が変性により減少してくると、他の神経細胞でレボドパをドパミンに変換するようになります。
その神経細胞ではドパミンを貯蔵しておくことができず、ドパミンが短時間で大量に放出されるようになります。
ドパミンが短時間で大量にドパミン受容体へ作用するため、ジスキネジアが生じてしまい、その後ドパミンが減少するため無動が生じてしまいます。
濃度の変動が大きくなりレボドパの効果が安定しない状態となっています。
wearing-off現象はパーキンソン病が進行してきた際に、ドパミンを保持能力が低下することで起こる現象だったのですね。
パーキンソン病が進行するとこのような症状の日内変動が生じてしまいます。
対策としてレボドパの服用間隔を短くする(1日の服用回数を増やす)方法があります。
単純にレボドパの量を増やしても、ジスキネジアが生じやすく効果時間も短くなっているため適しません。
1日量はそのままで投与間隔を短くすることで血中濃度を調節します。
レボドパ製剤以外の対策としては、ドパミン受容体刺激薬やMAO-B阻害薬、COMT阻害薬、レボドパ賦活剤(ゾニサミド)、アデノシンA2受容体作動薬(イストラデフィリン)などを使用することがあります。
次にon-off現象ですが、これはレボドパの服用時間に関係なく症状が良くなったり悪くなったりする現象です。
スイッチがついたり(on)、切れたり(off)するように症状が変化する状態となっています。
服用時間に関係なく症状が起こるので、offとなる時期の予測ができません。
原因は解っておらず、wearing-off現象にレボドパの吸収障害等その他の要因が合わさって生じているのではないかと考えられています。
対策として確実なものはありませんが、レボドパの分割投与やMAO-B阻害薬を用いる場合があるようです。
その他にもレボドパを服用しても効果がみられないno-on現象や、レボドパの効果発現に時間を要するdelayed-on現象と呼ばれるものもあります。
パーキンソン病が進行してくると、wearing-off現象、on-off現象、不随意運動(ジスキネジア)、no-on現象、delayed-on現象などの運動合併症が生じてきてしまいます。
レボドパはとても有効なパーキンソン病治療薬ですが、長期投与でwearing-off現象等の問題が生じてくる場合があり、高齢でなく特別な事情がなければレボドパからではなく、ドパミン受容体作動薬での治療を開始することが勧められています。
ドパミン受容体作動薬はレボドパほど効果は強力ではありませんが、ジスキネジアやwearing-off現象がレボドパよりも少ないとされています。
しかしレボドパとは異なる副作用の注意が必要となります。
ドパミン受容体作動薬ついてはこちらで述べさせていただきました。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
まとめ
・レボドパ製剤はパーキンソン病の最も有効な治療薬だが、長期投与で神経変性などによりwearing-off現象等の問題が生じてくる
・wearing-off現象 レボドパの効果時間が短縮し、次の服用までに効果が切れてしまう現象
・on-off現象 レボドパの服用時間に関係なく、症状が良くなったり悪くなったりする現象
・no-on現象 レボドパを服用しても症状の改善が見られなくなる現象
・delayed-on現象 レボドパの効果発現に時間を要するようになる現象
・レボドパ製剤の効果が安定せず、効果が強く現れると不随意運動が生じてしまう