薬剤師いんふぉ

薬剤師の学習記録です

リパスジル(グラナテック点眼液)の作用機序と結膜充血

リパスジル(グラナテック点眼液)は緑内障、高眼圧症に使用される点眼薬です。

 

Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)と呼ばれており、今回はその作用機序についてまとめたいと思います。

 

グラナテック点眼薬は、緑内障、高眼圧症に使用されますが、他の緑内障治療薬では効果不十分又は使用できない場合に選択されます。

単剤又は他の点眼薬と併用して使用されます。

 

眼の中には房水と呼ばれる水分があり、眼圧を一定に保ったり、眼に栄養を送ったりしています。

眼圧により眼の形状が維持されています。

 

この房水が充満してくると、眼圧が上がって視神経を傷つけてしまいます。

房水が多く作られたり、又はうまく排出できない場合に、眼圧の上昇が生じてしまいます。

 

房水は毛様体上皮細胞で作られています。

排泄はほとんどが、線維柱帯流出路(線維柱帯→シュレム管)から眼の外へ排出されますが、一部はぶどう膜強膜流出路から排出されています。

線維柱帯流出路は主流出路、ぶどう膜強膜流出路は副流出路とも呼ばれます。

主流出路は房水流出全体の8~9割を担うと言われています。

 

グラナテック点眼薬は主流出路である線維柱帯流出路(線維柱帯→シュレム管)からの房水の排泄を促進させて眼圧を低下します。

 

緑内障の方は線維柱帯細胞の数が減少しており、線維柱帯細胞に覆われていない部分が増え、間隙がなくなることで房水が通りにくくなってしまいます。

 

また、コラーゲンや弾性線維などが多量に蓄積しており、これも房水が通りにくくなる要因になります。

細胞外マトリクス(細胞の外に存在する蛋白質などの不溶性物質)が高密度になった状態です。

 

これらの変化が、房水の流出を妨げており眼圧の上昇につながっています。

 

グラナテック点眼薬はRhoキナーゼを阻害します。

Rhoキナーゼは全身に存在する酵素ですが、平滑筋の収縮に関わっています。

眼に存在するRhoキナーゼが阻害されると、細胞骨格が変化し線維柱帯細胞の形状が変化し房水が通りやすくなります。

 

また、線維柱帯細胞と細胞外マトリクスの接着に関与する種々の蛋白質の状態が変化します。

これにより線維柱帯細胞同士の結合を一時的に弱くしたり、細胞外マトリクスの構造を変化することで、房水の流出抵抗が減少すると考えられています。

 

このようにして、グラナテック点眼薬は、線維柱帯に間隙を作り房水流出を増やします。

 

結膜充血の報告が69%と高いです。

Rhoキナーゼ阻害作用により血管が拡張するため充血が生じていると考えられています。

点眼後、2時間程度で消失する一過性のものですが、点眼の度に繰り返し生じやすいです。

多くは点眼後30分までに発現し、2時間後には消失すると言われています。

充血がいつまでも続く場合は注意が必要です。

 

 

  まとめ

・グラナテック点眼薬はRhoキナーゼを阻害する

・主流出路である線維柱帯流出路(線維柱帯→シュレム管)からの房水の排泄を促進する

・充血が生じやすいが一過性のものである

 

 

  

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